

フィレンツェ市の企画している「フィレンツェのファッション・アトリエをめぐる」というツアーがあります。洋服の仕立屋、ウェディングドレス、オーダーメイドの靴やシャツ、 帽子、香水、ジュエリー、高級生地などの24アトリエを半年間(1月から6月まで)かけてガイドさんといっしょにまわります。今回は、1回3時間の中で、2つのアトリエと、教会などの歴史的な場所を見学していくというフィレンツェらしい企画、とても興味深いので参加してみました。


ツアーの待ち合わせ場所は、サントスピリト通りにある「Aprosio & Co」のショウルーム前。職人の工房が集中してある「オルトラルノ地区」(=アルノ川対岸の地区)です。Aprosio & Coは、1993年フィレンツェの小路に始まったビーズジュエリーのアトリエ。現在は、このサントスピリト通りにあるフレスコバルディ家の宮殿内に素敵なショウルームをかまえています。フレスコバルディ家は13世紀頃から始まったと言われているフィレンツェ名家のひとつですが、そういった歴史深い貴族の館が、現在は普通にショウルームとして使用されているというのは、いかにもフィレンツェらしいな、と思います。この界隈は、そういった古い歴史的な建物が立ち並んでいる上に、職人工房やショウルームが集中しているので、何もせずにただ歩いているだけでも、十分楽しめてしまいます。

さてそんな素敵な場所にあるAprosio & Coのショウルームは、とてもセンスが良く、洗練された雰囲気でいっぱいです。ベネチア・ムラノ島のガラスビーズやボヘミアのクリスタルガラスを使って、フルーツやお花、昆虫、海、動物・・・。自然をテーマに、ひとつひとつ丁寧に手作業で作り上げられた美しいバッグやアクセサリーが展示されていて、まるでアートギャラリーのようです。ショウルームでは、作品の創り方を実演して見せてくれました。

コットンの糸にあらかじめビーズを通しておいて、それを一つ一つ鈎針で編んでいくというテクニックがよく使われるそうです。デザイン画通りの模様ができあがるように、糸に通すビーズの順番はあらかじめ計算して決められているそうで、一粒でも順番を間違えるとデザインがずれてしまってやり直しです。すべてが手作業なので、とてつもない時間がかかります。また、はたおり機の要領で、横糸に、ビーズを通した縦糸を織り込んでいくというテクニックもよく使われるそうです。
丁寧な物づくりをしている職人やアーティストたちが多くいるフィレンツェですが、なかなか状況も厳しいそうです。まず、職人の技を受け継いでいきたいという若者が減っています。何年も下積みをしていくという、一見、地味で根気のいる仕事です。また購入するお客様も、有名ブランドや大量生産の安価なものに走っていく人も多いだろうと想像できます。そんな中で、作られた作品から情熱やストーリーを感じ取ったり、技のすばらしさを本当に理解してくれるお客様というのは、日本人が多いのですよ、とのこと。実はこれはどこのアトリエに言っても、良く言われることです。徹底した技やセンスなどがぎっしりと詰まったイタリア職人たちの情熱を感じ取れる「感性」を私たちがもっているのかもしれません。創り手と買い手は、出来上がった「物」を通して、感性でコミュニケーションをしているとも言えます。

Aprosio & Co ショウルーム訪問の次は、ベッキオ橋近くにあるオーダーメイドの靴職人工房をまわり、その後、工房の目の前にあるサンタ・フェリチタ教会の中を見学し、いっしょに付き添ってくれたイタリア人ガイドさんから教会の歴史的なお話をききました。 なかなか盛りだくさんで、楽しいツアー企画に大満足でした。
Aprosio & Co
http://www.aprosio.it/
Mestieri della Moda, Firenze
http://www.florenceartfashion.com/

