

フィレンツェ・スカーラ通り16番地。豪華で贅沢をつくした中世の建物の中に足を踏み入れるとハーブの優しく上品な香りがたちこめている。現存する世界最古の薬局といわれているサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局へ行ってきました。


13世紀初め、フィレンツェに移住してきたドミニコ会の修道僧たちが始めたと言われています。清貧や救済活動を教えとしていたドミニコ会修道僧達は自ら薬草・花を栽培して、僧院内にある薬局で薬剤・軟膏・鎮痛剤等を調合してきました。小さな教会(のちにサンタ・マリア・ノヴェッラ教会となる)で、2人の修道士が医薬的な介護も行っていたようです。1612年には正式に薬局として認可。メディチ家のフェルディナンド2世からの厚い信望を得て、「フォンデリーア・ディ・スア・アルテッツァ・レアーレ(王家御用達製錬所 Fonderia di Sua Altezza Reale)」の称号を得るまでに成長していきます。

さて、ここで紹介したいのが、1533年フィレンツェのメディチ家よりフランス王アンリ2世に嫁いだカテリーナ・デ・メディチ(フランス語読みだとカトリーヌ・ド・メディシス)。
彼女がフランスへ嫁いだ際には、イタリア料理人やジェラート職人をひきつれていき、その料理が発展して現在のフランス料理ができあがっていったという話はとても有名です。クラッシックバレエも彼女によってフランスへ紹介されたと言われています。
カルチャー先進国であったルネッサンス期のフィレンツェから様々なものをフランスへ運んでいった「キーパーソン、お洒落と流行の達人・ファッションリーダー」という感じですね。
そのカテリーナ・デ・メディチは、サンタ・マリノヴェッラ薬局で処方された香水(アクア・ディ・コロニア)もフランスへ持参したそうです。パリでは「オー・デュ・ラ・レーヌ(王妃の水)」と呼ばれていたサンタ・マリア・ノヴェッラの香りは、当時フランスで使用されていた香水よりも繊細で軽やかだったために、ブルボン王朝の貴婦人たちの間で瞬く間に大流行しました。今でも当時そのままのレシピで製造され製品として売られているというのも興味深いです。

取り扱われている製品がすばらしいだけにとどまらず、サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の魅力はフレスコ画に彩られたすばらしい建築にもあります。賑やかなスカーラ通りに面してある小さめの入り口の扉をあけて中へ入っていくと、突然、別世界が広がる感じで大理石の廊下が続きます。建物内は天井が高く、外の喧騒が嘘のようにまったく聞こえてこない静かな空間です。リキュールの部屋、ハーブの部屋、器具類の展示室など、どの部屋も歴史の重みを感じさせる建築とインテリアで、買い物をしなくてもただまわっているだけで見ごたえたっぷり。 展示室には薬草図鑑や薬のレシピ本、軟膏やエッセンスを保存するために使われていたという壷、すりつぶし器、蒸留器などが並んでいて、かつての製造風景を垣間見ることができます。

完璧なまでに美しい建物内部を見学し、心地良い香りを嗅いで、歴史に思いをはせ・・・。ハーブを処方されたわけでもないのですが、すべての感覚を通してすっかりと癒されてしまいました。薬局内をひとまわりしただけでも美容に効き目があった気がします。 メディチ家、ナポレオン、王侯貴族たち…そして現代にいたるまで、長い歴史を通して、多くの人たちを癒し続けているサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局です。
サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局
Officina Profumo-farmaceutica di Santa Maria Novella
Via della Scala, 16
Firenze - Italy

