
ジーコがあこがれたジーダ、ぺぺなど有名サッカー選手の出身地としても知られる、ブラジル北東部のアラゴアス州。エメラルドグリーンの美しいビーチで有名な州都のマセイオから240キロ離れたところに、イーリャ・ド・フェーフォ(Ilha do Ferro)という小さな村があります。この村はポン・デ・アスカールという郡に属するのですが、リオデジャネイロ市の観光名所でもあるポン・デ・アスカールと同じ綴り、またリオのキリスト像のミニチュア版が丘の上にそびえ、川を挟んで反対の街の名前はニテロイと、これまたリオデジャネイロ市と似通っている面白い街です。

さてイーリャ・ド・フェーフォですが、実はこの村だけで受け継がれている、刺繍が有名で、現在リオデジャネイロで展覧会が行われています。200世帯が居住するといわれるこの小さな村は、ポルトガル植民地時代にサトウキビから生産する砂糖の工場で栄えた土地でした。そんな歴史の中、ヨーロッパからの移民がもたらした刺繍と、隣接するサンフランシスコ川の猟師の網を編む技術が交わい、この村だけの刺繍法が編み出されたのです。

ヨーロッパの刺繍を独自に発展させたこの刺繍法は、「Boa Noite」と呼ばれます。ポルトガル語で「こんばんは」の意味ですが、この地方にあふれる花の名前でもあります。母から娘へと受け継がれてきた女性の仕事で、「Boa Noiteシンプル」、「Boa Noite花」、「Boa Noite満開」、「Boa Noite変形」の4つのパターンがあります。

ブラジルにはカラフルで華やかな刺繍があふれていますが、この「Boa Noite」は布地と同色系の刺繍糸を使用しており、きわめてシンプルな色合いとなっています。シンプルだからこそ長く使用でき、コーディネートも選びません。女性たちの手で一刺し一刺し仕上げられた刺繍布は、インテリアやファッションに取り入れられています。

イーリャ・ド・フェーフォは、平均気温は30度。夏は40度を越え、アラゴアス州で最も暑い街です。ミナス州から流れるサンフランシスコ川のほとりの自然溢れる小さな村で、女性は刺繍、男性は木材を使用したインテリア製作にはげみます。この刺繍もそうですが、男たちの作品も自然や生き物を表現しているのが特徴です。女たちが集い、歌いながら進める手作業。そんな温もり溢れた花の刺繍は今、川のほとりの小さな村を抜け出し、ブラジル全土にその名を広めつつあるのです。

